iPS細胞の未来
30億塩基対からなるヒトのDNA(デオキシリボ核酸)。
26000の遺伝子があると言われている。
そのうちの5000ほどが酵素であり、数百種類ペプチド性のホルモンやサイトカインがあると言われてる。
これらすべてが、何らかの生体内反応に関与しているわけであるから、まさに宝の宝庫である。
遺伝子操作の技術が普及し始めた80年代。
製薬会社はもとより、化学や繊維の会社が一攫千金を求め、この技術を学んで医薬開発にこぞって参入してきた。
世界中が浮足立った。
夢の新薬である。
そう信じて、誰もがその将来を期待した。
私も騙された一人ですが。(笑)
そして、それから30年ほど経つのだが…。
実は、医薬品として認可されたものは、驚くほど少ない。
全世界ですべて合わせても、僅か30品目程度であろう。
開発途中に大きな壁にぶつかり、多くの企業は開発を断念せざるをえなくなったのである。
その多くは「薬効」あるいは「副作用」である。
期待されたほど効かないのである。
あるいは、副作用が予想外に広く、また強いのである。
だから、開発中止と同時に、多くの企業は遺伝子操作の技術さえも捨ててしまった。
金にならない以上、もっていても意味がないからである。
撤退が始まったのは90年代のことである。
ブームが始まってから、僅か10年後である。
それから時が経って、iPS細胞が発明され、再び世界が浮き足立っている。
だが、…。
だが、現実はそうでもないようなのである。
船瀬俊介氏は、著書で以下のように述べている。
タブー50:iPS細胞発がん
iPS細胞は「増殖抑制酵素」を破壊して成立する。するとがん細胞も猛烈に増殖。夢の再生医療の真相は発がん医療だった。だがこれに触れる事はタブーなのだ。
わが身に危険が迫ってもこれだけは伝えたい日本の真相!、船瀬 俊介、成甲書房
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4880862983/pugachohu-22/ref=nosim/
まぁ、彼が指摘するタブーの幾つかは明らかに過剰反応だとも思えるのだが、iPSについては概ね当たっていると言えようか。
人工多能性幹細胞 (ウィキペディアより)
iPS細胞の課題
しかし、真の実用化までには、まだ課題がある。
癌化
マウスの実験において表面化した最大の懸念は、iPS細胞の癌化であった。iPS細胞の分化能力を調べるためにiPS細胞をマウス胚盤胞へ導入した胚を偽妊娠マウスに着床させ、キメラマウスを作製したところ、およそ20%の個体において癌の形成が認められた。これはES細胞を用いた同様の実験よりも有意に高い数値であった。この原因は、iPS細胞を樹立するのに発癌関連遺伝子であるc-Mycを使用している点と、遺伝子導入の際に使用しているレトロウイルスは染色体内のランダムな位置に遺伝子を導入するため、元々染色体内にある遺伝子に変異が起こり、内在性発癌遺伝子の活性化を引き起こしやすい点が考えられた。
このため、iPS細胞を作出するのに、癌遺伝子を使わない手法の開発が多くのグループにより進められている。
2007年12月には、c-Mycを除くOct3/4・Sox2・Klf4の3因子だけでも、マウス・ヒトともにiPS細胞の樹立が可能であることが山中らによって示され、iPS細胞が癌化するのを抑えるのに成功した。ほぼ同時にヤニッシュらのグループも同様の実験にマウスで成功している。しかし、作出効率が極めて低下するとの問題があり、効率を改善する手法の開発が進められている。2011年6月9日、Oct3/4・Sox2・Klf4の3因子にGlis1という遺伝子を加えることで、c-Mycを加えた時と同様の作製効率となる上に癌化するような不完全なiPS細胞の増殖も防ぐという画期的な研究が発表されている。
また、レトロウイルスを用いないでiPS細胞を作出する手法の開発も進められている。慶應義塾大学医師の福田恵一らのグループではTリンパ球にセンダイウイルスを導入する方法を報告している。 2009年3月には、英エディンバラ大学の梶圭介グループリーダーらにより、ウイルスを使わないでiPS細胞を作成する方法が発表された。
iPS細胞から組織への分化誘導
1981年にマウスES細胞、1998年にヒトES細胞が樹立されてから年月が経ち、定期的に脈打つ心筋細胞や軸索を持った神経細胞、インスリンを分泌する膵β細胞など、ES細胞からさまざまな種類の細胞を作り出すことに成功しているが、大部分はまだ細胞レベルの基礎研究であり、実際に移植した際の機能や組織補完能力についてはまだ良く分かっていない。また、高度な機能と構造を持った組織や臓器レベル(心臓、脳、膵臓など)の再生は、実用化に程遠いのが実状である。
拒絶反応
従来はiPS細胞は、元になる細胞を提供した個体に戻しても拒絶反応は起こらないと考えられていたが、マウス実験ではiPS細胞でも拒絶反応が起こりうることが報告された。
しかしこの実験には問題があり、信憑性は定かではない。現時点ではiPS細胞に対して免疫拒絶反応が起こったのかどうかは決着がついていない。
正常な細胞にはない機能を、人為的に導入した遺伝子を働かせることで求めている。
だが、一度入れてしまったら、その遺伝子は代々受け継がれてしまうのである。
そういう意味で、近い将来にその細胞がガン化するのは、確かに避けられないかと思う。
例えるなら、ブレーキを壊した車のようなもの。
細胞を分化・分裂させているうちは良いが、いざ分化・分裂を止めようと思っても、これでは思ったようには止まるまい。
ガン化するのは、いわば必然の帰結である。
もう一つの課題は、分化誘導である。
高度な機能と構造を持った組織や臓器レベル(心臓、脳、膵臓など)の再生は、実用化に程遠いのが実状なのだそうである。
人体は60兆個もの細胞よりなる。
つまり、体重1㎏当たり1兆個である。
1回の細胞分裂で2倍になるとすると、1個から始まった細胞は40回分裂してやっと1兆個(1㎏)になる。
順調に進んでも、おそらくこれには、ヒトの妊娠期間にほぼ匹敵する時間を要するはずだ。
また、特定細胞への分化誘導が技術的に難しいのはもちろんだが、現実はそのはるか以前の話であろう。
こんな長期間の培養では、コンタミネーション(微生物等による汚染)の問題が、避けがたい現実としてのしかかってこよう。
でもまぁ、めでたく成功した場合は、ガン化のリスクは低いかも知れない。
ガン化していない細胞を選べるからである。
つまりまとめると、
・未分化の細胞の場合は、ガン化しやすい。
・高度に分化した組織や臓器は、実用化が難しい。
結局のところ、適用できる事例は、ほとんどないか、あってもごく僅かであろうということである。
遺伝子操作技術と、同じような結末が予想されるのである。
10年も経てば、その見極めができ、撤退する研究機関が続出するのではないか?
そのような気がします。
分化に対する私の仮説です。
まぁ、私の推測というか、妄想かも知れませんが。(笑)
そもそも①:高度に分化した細胞には、デオキシリボ核酸(DNA)はない。
注)全部ではないが、部分的に存在しない。
かといって、失なってしまったわけでもない。
(禅問答ですね。笑)
このデオキシリボ核酸がないから、さらなる分化や分裂に制限がかかることになる。
これを解除し、②:分化万能性と自己複製能をもたらすのは、何らかの遺伝子ではなくある特定の酵素である。
そしてその酵素は、おそらく精巣(金玉)の中に豊富にある。
こう予言しておこう。
この詳細については、また別の記事にでもしようかと思う。
品のない国に言われても
日本はこんなに品のない国だったろうか、だって。
そんな、品のない国に言われても。(笑)
(朝鮮日報日本語版) 日本の週刊誌にあふれる「嫌韓」「笑韓」報道
朝鮮日報日本語版 12月29日(日)10時30分配信
「17歳の狂気、韓国」「総力特集、韓国亡国論」「外資の植民地、韓国」「サムスンを内部告発」…。今、日本の書店の棚に並んでいる雑誌を見ると、この種のタイトルが目に付く。このところ日本社会の一部に見られる「嫌韓」「笑韓」と呼ばれる韓国観を反映したものだ。「日本はこんなに品のない国だったろうか」と思ってしまうくらいに、タイトルや言葉が殺伐としている。
例えば、『WiLL』という極右寄りの月刊誌に載った「韓国亡国論」と題する記事には「韓国の国民性は奴隷根性」という文章が登場する。産経新聞政治部記者出身の山際澄夫氏が書いた記事だが、山際氏は韓国について門外漢に近い。「17歳の狂気、韓国」と題する記事を書いた西尾幹二氏も、韓国をきちんと研究したことはない。門外漢が書いた雑文が、国の知性を示す大手書店の書棚を占領しているのだ。
■非難型
各誌の嫌韓報道は、三つのタイプに分類される。第一は、韓国政府や韓国の朴槿恵(パク・クンヘ)大統領をけなす「非難型」。
反韓記事で最近威勢がいい雑誌『週刊文春』は先月「“無法国家”韓国から撤退しよう」と題する記事を載せた。また9月・10月には「韓国の妄言に“10倍返し”だ」「総力特集 だから韓国は嫌われる」といった記事を相次いで掲載した。安倍首相が韓国について「愚かな国」と語ったと報じ、物議を醸したのも同誌だ。『週刊文春』は文芸春秋社が発行しており「暴露」「極右」「品のない」記事で知られる。日本の出版関係者は「日本の既成メディアはほとんど引用しないのに、韓国メディアが大きく取り上げ、韓国政府も反応するため、おかしなことになっている」と語った。実際、同誌は「愚かな国」報道の後「本誌の記事が韓国に大波乱を起こしているが、反日韓国政界は今も自省していない」と興奮している。
同誌は少し前に「(日本の)悪口を言いふらしている」として、朴大統領を「今週のバカ」に選んだ。この記事で同誌は「朴大統領は愛された経験が少ない。こんな状況を打開するためには、大人の彼氏が必要」と書いた。駐韓特派員の経験がある日本のメディア関係者は「近ごろの週刊誌の韓国関連記事は、ほとんどごみのようなレベル」と語った。同誌は、最新号に「韓国マスコミが突いた朴槿恵大統領の『急所』」と題する記事を載せ、最近の退陣要求デモ、父親の故・朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領から受け継いだ遺産、隠し子疑惑などについて大々的に報じた。
『週刊文春』は、一連の反韓報道で部数を2万部ほど伸ばしたといわれている。するとライバルの『週刊新潮』は最近、朴大統領の従軍慰安婦謝罪要求を意識して「『朴槿恵』大統領が認めないベトナム戦争の大虐殺 老若男女を皆殺しにした『韓国軍』残虐非道の碑」と題する記事を載せた。記事では「韓国軍は妊婦の腹に向けて銃を撃った」と主張し、末尾には「朴大統領は今年5月『日本は鏡を見て責任ある歴史認識を持つべき』と語った。その歴史の鏡は、自らにも向いている」とつづった。
■「嘲笑型」と「呪い型」
嫌韓記事の二つ目のタイプは、韓国の外交政策や経済・文化を皮肉る「嘲笑型」だ。テーマは、独島(日本名:竹島)や慰安婦といった歴史問題から最近の韓国の対日外交まで各種ある。「逆転勝利『東京五輪』の非公式情報 露骨な嫌がらせが水泡に帰した『韓国』の歯ぎしり」(週刊新潮)、「韓国愚かなり! 『日本水産物禁輸』で『中国猛毒食品』頼み」(週刊文春)、「世界で『反日ヘイトスピーチ』をバラまく国家は中国・韓国だけ」(週刊ポスト)などがその代表例だ。雑誌『週刊大衆』は先月、サッカーの韓国対ブラジルの親善試合を取り上げ「世界中が激怒する韓国サッカーFIFA(国際サッカー連盟)追放5秒前」と題する記事を掲載した。韓国選手が反則を乱発し、乱闘直前の状況にまで至ったという内容だ。
三つ目のタイプは、将来を予測するふりをした「呪い型」。『週刊文春』は、韓国に第2の通貨危機が訪れると書き、『週刊SPA』は「『中韓』の経済崩壊に便乗する投資法」という特集を組んだ。『週刊ポスト』は「反日・韓国に経済制裁を! 朴槿恵が泣いて謝罪する“5つの切り札”」と題する記事で「韓国と為替戦争をすれば韓国の輸出産業は壊滅する」「半導体の部品輸出を中断したらサムスンの生産ラインは止まる」「自衛隊が韓国軍に協力しなければ、北朝鮮の砲弾でソウルは火の海になる」など、とんでもない論理を展開した。話の種が尽きてきたため「信じようが信じまいが関係ない」という記事まで載せているわけだ。
世界的な週刊誌でも事情は変わらない。『ニューズウィーク』日本版は今月10日「反日韓国の妄想」と題する特集を組み、朴槿恵大統領を表紙に登場させた。さらには成人向けの雑誌まで反韓戦線に加勢している。ヌードグラビアで稼いでいる週刊誌『FLASH』は「『悪韓』はレイプ大国だ!」「朴大統領四面楚歌 経済制裁を発動せよ! 韓国『撃沈』までの全シナリオ」といった特集記事を掲載した。
■日本の週刊誌の「飯の種」
日本の大手新聞は、どちらかというと客観的で権威がある。もちろん、質の悪い情報や極端な主張への需要が、日本にないわけではない。日本では伝統的に、こうした需要に応える役割を週刊誌が担当している。「暴露」「品のなさ」が週刊誌の「飯の種」というわけだ。週刊誌市場が縮小していることも、雑誌をさらに品のないものにしている要因だ。
日本のあるメディア関係者は「権力を失ったり、人気が高いからと度を超す振る舞いをしたり、天皇を冒涜(ぼうとく)する不敬と見なされたりしたら、すぐさま週刊誌が攻撃する。玉石取り交ぜて暴露するため、政界では政敵を排除する道具として用いられる」と語った。安倍晋三首相も、2007年に一度首相の座を退いたころ、在日韓国人との関係が週刊誌の標的になった。一時は株を上げていた橋下徹・大阪市長も、主に不倫や出自にまつわる問題で週刊誌の集中砲火を浴びた。
このため「別の標的が生まれれば嫌韓記事も沈静化する」と考える人が多い。在日韓国大使館側は「今ではネタがぱっとしない上に、張成沢(チャン・ソンテク)氏の件など北朝鮮関連の話題も浮上しており、いずれ嫌韓報道も消えると思う」と語った。早稲田大学の韓国学研究所長を務める李鍾元(イ・ジョンウォン)教授(国際政治学)は「韓国が過敏に反応すると、まさにそれが、日本の週刊誌の望む『ノイズメーキング(騒ぎ立てること)』になってしまう。週刊誌の嫌韓報道を完全に無視することはできないが、報道内容が日本国民の反韓感情だと拡大解釈することには慎重になるべき」と語った。
中国に進出している日本企業の幹部に対し、首相周辺がハッキリと「撤収」を促し始めた
「ここにきて、中国に進出している日本企業の幹部に対し、首相周辺がハッキリと「撤収」を促し始めた」
ジャーナリスト:高橋浩正氏の発言だそうです。
私も同感です。
とはいうものの、穏便には帰れない国。
まぁ、少々手荒にしてでも、強行すべきかと。
それでも無理な場合は、残念ながら自己責任ですね。
歴史も国民性も調べずに、目先の利益に目がくらんだとしか…。
高い授業料だったとして諦めるしかないでしょう。
http://toyokeizai.net/articles/-/27336
起こるべくして起きた、靖国参拝という大事件
膨張する「嫌中国・韓国」感情の裏にあの男
高橋 浩正 :ジャーナリスト
2013年12月27日
国のトップとして”有言実行”といったところか。
安倍晋三首相が与党内、さらに米国の反対を押し切り、首相在任中の靖国神社参拝を決行した。そして懸念されていた通り、中国、韓国は猛反発し、亀裂はいっそう広がった。もちろん、安倍首相としては織り込み済みだろう。
「対話のドアはつねにオープンだ」
安倍晋三首相は今まで、何度このフレーズを口にしてきただろうか。悪化の一途をたどる中国、韓国との関係について語るときは、必ずと言っていいほど飛び出してきた。まるで「日本は柔軟に対応するので、もっと歩み寄ってほしい」と言わんばかりだが、これが単なるポーズで、本人にそのつもりはまったくないというのが、永田町の定説だ。
つまり、日中、日韓関係が好転する気配など、どこにもないということだ。両国に縁のある日本企業は多いが、安倍首相のポーズに惑わされずに早く対策を練らないと、思わぬ憂き目に遭うかもしれない。
「余計なことをするな」
まだ表に出ていない、こんなエピソードがある。11月7日、韓国・ソウルで開かれた、日中韓の外務次官級協議。杉山晋輔外務審議官が、旧知の間柄である朴槿恵・韓国大統領の側近と会い、首脳会談の実施に向けて地ならしを試みた。ところが帰国後、安倍首相側近の政府高官に結果を説明すると「余計なことをするな」と怒鳴られたという。
確かに杉山氏は、事前に官邸サイドの指示を仰いでいなかった。スタンドプレーに走ったそしりは免れない。ただ、この一件で「中韓両国に対話の糸口すらつかませない」という安倍政権の隠された意図を感じ取った外務省は、事実上、さじを投げてしまったらしい。
さらに安倍首相の“暴走”は続く。ここにきて、中国に進出している日本企業の幹部に対し、首相周辺がハッキリと「撤収」を促し始めたのだ。今後、韓国は経済危機によって日本に頭を下げてくるかもしれないが、中国との冷戦状態は間違いなく長期化する――。そんな予測を披露しているという。つまり、日中関係を改善する意欲がないと、公言しているも同然なのだ。
もっとも、尖閣諸島の国有化と前後するように、反日感情の高まりに悩む日本企業が中国から脱出するケースは増えている。ヤマダ電機は南京と天津、三越伊勢丹は遼寧省の店舗を閉鎖。無印良品や紳士服の青山、ワコールは、中国における生産比率を下げた。ほかにも楽天などが、中国での事業縮小を決断している。もちろん労働コストの高騰、中国市場バブルに対するリスク回避、といった理由もあるが、ある会社の役員は「撤退の決定打になったのは現地の冷たい目」と明言する。
しかし、こうした“脱中国”は、大企業だからできることでもある。今や中国に進出している日本企業は3万社に上るが、うち3分の2程度は中小企業が占めているとされる。
「撤退しようとすれば、中国側から設備を含めた全資産を譲渡するよう求められるし、現地従業員に対する経済補償金、つまり割り増しされた退職金を支払う必要もあります。ただリストラの可能性が浮上しただけでも、経営陣が軟禁されてしまうケースは珍しくない。中小企業には、そんなリスクを乗り越えられるだけの体力も胆力もありません。日本では最近、そうした企業に向け、中国から離れるテクニックを指南するセミナーが盛況になっているほどです」(日本の総合商社幹部)。
侮れない、「野中・小沢」勢力の動き
尖閣諸島で繰り返される領海侵犯、防空識別圏の設定など、中国が打ち出す対日侵攻策はエスカレートするばかりだ。日本国内における嫌中国、嫌韓国感情は膨らむ一方で、週刊誌や夕刊タブロイド紙では、売り上げ部数を伸ばそうと、中韓たたきが過熱している。あるベテラン政治ジャーナリストには、「何でもいいから中韓を批判できるネタがほしい」「永田町の話題ではなく、少しでも中韓を絡めたコラムを書いてくれ」という無茶な注文がひっきりなしに届いているという。
安倍首相は、こうした世論を感じ取り、政権を安定させるために、わざと中国、韓国との関係改善を先延ばししているのではないか――。与野党問わず、そうとらえている国会議員は多い。さらに水面下では、中韓関係をエサにするかのように、激しい政治闘争が繰り広げられている。
「かつて『悪魔』と罵倒した政敵と、再び手を結ぶのか」
首相官邸スタッフはこう語り、自民党大物OBに気をもむ。意外かもしれないが、それは「脱原発」を訴え、国民の耳目を集める小泉純一郎元首相ではない。かつて「影の総理」と称されるほど絶大な権勢を振るった、野中広務元官房長官だ。官邸による警戒の強さは、小泉氏と同等か、それ以上に強いと言っても過言ではない。
「小沢一郎・生活の党代表のブレーンである平野貞夫元参院議員に、野中氏が接触している」
官邸サイドが初めて、小沢氏周辺からそんな情報を入手したのは9月中旬だったという。「やはり安倍内閣の外交が行き詰まった。これを火種にして、何とか安倍を引きずり下ろす手はないか」。漏れ伝わる会話からは、内閣を退陣に追い込む“共闘プラン”を探っていることがうかがえる。そのため、彼らの動向を注視せざるをえないようだ。
とはいえ、野中氏は引退から10年。政界への影響力はそうとう薄らいでいる。小沢氏も今や弱小政党のトップで、次期衆院選に出馬しない可能性がささやかれるほどだ。自民党閣僚経験者の言葉を借りるなら、2人とも「終わった政治家」である。一方、安倍内閣の支持率は、特定秘密保護法案の採決強行で大きく落ち込んだものの、アベノミクスへの期待や東京五輪の招致成功などによる“貯金”が大きく、いまだ堅調。弱小の「野中・小沢同盟」を気に留める必要など、まったくなさそうに見える。
ところが、そうタカをくくれない背景がある。野中氏のバックには、自民党内で冷や飯を食らっている、リベラル派議員が控えている。さらに、内閣改造や党役員交代が先送りされ、政権運営に対して党内が抱く不満の“ガス抜き”として使えるはずの人事も滞留している。
反・安倍勢力の足音
今や自民党は「安倍一強時代」と揶揄されるほど、一色に染まってしまった。麻生太郎副総理や石破茂自民党幹事長も、「出るクイは打たれる」より「長いモノには巻かれろ」とばかりに鳴りを潜めてはいるが、安倍首相の後継を狙う意欲を周辺ににじませている。そうすると、まるで向かうところ敵なしのように見える安倍首相だが、現体制が自民党内に抱える“不安要素”は驚くほど多いことがわかる。
野中氏と党内リベラル派に触発される形で、倒閣運動が首をもたげる可能性がくすぶる。そこに、いくら落ちぶれたといはいえ、百戦錬磨の小沢氏がかかわったら――。
こうした動きを気味悪がったためか、官邸は親中・親韓議員から“権益”を奪おうと躍起になっている。象徴的な例が、10月15日に衆院予算委員長のポストに“飛ばされた”と目される二階俊博衆院議員だ。
「あれだけスピーチの練習をしていくのであれば、中国や韓国に対してもスピーチを練習したらどうか。五輪招致のために努力した情熱の半分でもいいから、いろいろ努力すべきだ」
二階氏は9月11日、五輪に血道をあげる首相にこう注文をつけ、官邸サイドと鋭く対立した。これをきっかけに、二階氏の人事が敢行された、という観測が、自民党内で飛び交っている。
衆院予算委員長は「国会の司令塔」と評されるほど、国会運営のカギを握る重要な立場だ。しかし、二階氏が適任かどうかと問われれば、首をかしげてしまう。
自他ともに認める「建設族のドン」である二階氏は、総額200兆円もかけて国内のインフラを整備する「国土強靭化計画」の旗振り役である。公共事業の受注を狙って近づいてくる関係者は少なくないはずで、そこに莫大な利権が発生することも想像に難くない。
安倍官邸は、そんな二階氏を国土強靭化計画から遠いポジションに置いた。畑違いの役職に“封じ込めた”とみるのが自然だ。かつて、野中氏と小沢氏、二階氏は、今でこそ袂を分かったが、自民党と旧自由党による連立政権では中核にいた。そして何より、中国とパイプを持つという点も共通するのである。
実力者である二階氏の処遇に、親中派コネクションの決起を恐れる首相の姿がちらつく。そもそも、本気で中国や韓国と折衝したいなら、二階氏をパージする必要はないのだ。
世間に迎合するだけでなく、「わが世の春」を確固たるものにするために、中国、韓国との関係改善を放置しているとするなら――。隣国とのビジネスで苦心惨憺する日本企業にとって、これほど空しいことはない。