「日朝合意」の真相を考える カギは1日の空白にある

 
原田武夫氏が、面白いことを指摘しています。
彼は外務省で、対北朝鮮外交の実務に携わってきた人物です。

『現在の日朝交渉のベースとなっているのは「金丸訪朝団」であるが、これが実施されたのは1990年であり、「平成バブル」の直後であった。また日本人拉致問題をヒートアップさせることになった「小泉訪朝」が実施されたのは2002年。すなわち「ITバブル」の後であった。このように北朝鮮が動くのは決まって、我が国がグローバル・マクロ(国際的な資金循環)という観点で見た場合、マネーが集積した直後なのである。なぜならばそのタイミングでしか我が国政府にカネがないからである。』

北朝鮮が日本に近づくのは、バブル崩壊の直後。
その理由は、その時でないと日本政府にお金がないから。

この法則に従うなら、現在進めている日朝交渉が実現する頃には、いまのバブル(アベノミクス)が崩壊するのだとか。
逆にいうと、この進展を見ていると、バブル崩壊の時期が分かるということです。

ほかにも興味深い情報がありますね。


http://bylines.news.yahoo.co.jp/haradatakeo/20140602-00035901/
「日朝合意」の真相を考える カギは1日の空白にある
原田武夫 | 株式会社原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)代表取締役
2014年6月2日 8時0分


「日朝合意」について憶測で語るべきではない

先月26日から28日までスウェーデン・ストックホルムにおいて日朝局長級協議が実施された。今年3月20日に課長級協議が中国・瀋陽で実施され、この「局長級協議」の実施について合意されたことを踏まえ、実現したものである。

今回の局長級協議が終了した直後に行われた記者団への説明では「協議継続」とだけ語られたことが、それを踏まえて行われた公開報道を見る限りでは分かる。ところが翌29日の夜になって安倍晋三総理大臣は突然、記者団に対して「北朝鮮側と日本人拉致問題に関する再調査で合意した」と東京において発表したのである。一方、北朝鮮側も同日午後6時30分の朝鮮中央放送と平壌放送における「臨時ニュース」で「朝日政府間会談の結果に関する報道」と題し、同様の合意内容を伝えた。これらの展開を踏まえ今、我が国では「拉致被害者がようやく戻って来るのでは」「いや、北朝鮮はまた茶番を繰り返すのではないか」との見方が繰り広げられている。

だが、北朝鮮問題についてはあれやこれやと憶測を述べることは禁物である。私は2005年まで外務省において北東アジア課北朝鮮班長を務めたが、その時の経験から言ってそう断言することが出来る。今後の展開を考えるにあたって大切なのは北朝鮮側を中心とした関係者による言動を検討することである。それをあくまでもベースにしながら分析することが、結果として今後について最も的確な結論を導き出すことを賢明なる北朝鮮ウォッチャーたちは皆知っているのである。

「合意文」発表までの1日の空白というナゾ

ここで私が注目したいポイントは5つある。「協議終了から『合意』発表までの1日という空白」「グローバル・マクロ(国際的な資金循環)から見た『合意』が発表されたタイミング」「北朝鮮が発表した『合意』文の詳細」「俄かに『説明責任』を語り始めた金正恩」そして「北朝鮮による弾道ミサイル発射の可能性」の5つである。

まず、対北朝鮮外交の実務に携わった経験から言うと決定的なのがこの協議の終了直後には「拉致再調査で合意」とは発表されなかったものの、その後1日経過してから、しかも安倍晋三総理大臣自らの口からこれが発表されたという事実である。かなり細かなことのように見えるかもしれないが、この「1日の空白」が持つ意味合いは果てしなく大きい。

なぜならばこうした協議の直後、日本側においては代表団長が記者会見を行うか、あるいは最低限、協議概要を示したプレスリリースを発表しなければ同行記者団との関係で「持たない」というのが実務レヴェルでの常識だからである。今回の成り行きを見ると、同行記者団はいわば「一杯喰わされた形」になりかねないわけであり、それを踏まえてでも東京で、しかも総理レヴェルから発表したことの意味を考える必要がある。

すなわちこれは率直に言うと「協議の現場では判断できない、高度に政治的な要求事項が北朝鮮側から突き付けられた」か、あるいは「いかなる合意が現場レヴェルで持たれたにせよ、安倍晋三総理大臣の『得点』になるよう、あらかじめ日本側から依頼して1日のズレを発表に持たせたのか」のいずれかを意味しているからである。そして仮に前者であった場合、日本側は大きく譲歩したことが推定されるのであって「それは一体何であったのか」が問題となるわけだが、発表された合意文を見る限り、それは一切明示されていない点が問題となるのだ。

他方で対北朝鮮外交の実務経験を踏まえて言うならば大変気になるのが、我が国の外務省が今回の「合意」について公式ホームページを通じて発表したのは、5月30日になってからのことであったという点だ。通常ならば総理官邸が発表するにせよ、それと同時に「間髪入れずに」外務省も対外公表を行うべきものである。だがここでもあえて「1日の空白」が設けられている。その結果、明らかに内政上、得点を獲得したのはプレスの関心を一身に浴びることになった安倍晋三総理大臣であったというわけなのである。

北朝鮮の「合意」とグローバル・マクロの密やかな関係

もっとも当の安倍晋三総理大臣の側からしても、現在は外交ルートを通じて行っていることになっている事前の交渉(対外公表は一切しないが、通常は外務省アジア大洋州局幹部が「電話」にて北朝鮮外務省のカウンターパートと行う)の途中結果にもかかわらず、果たして北朝鮮側が最終的に折れるか否か、最後まで疑心暗鬼であったはずである。だが、これを巡っては北朝鮮側の動きを考える際に大きなヒントとなる事実が一つだけあるのだ。それはグローバル・マクロ(国際的な資金循環)である。

なぜこれが大きなヒントになるのかといえば、北朝鮮側が我が国と交渉を行っている目的はただ一つ、「戦後賠償」名目で大量のマネーを我が国から奪うことだからである。事実、今回の「合意文」が発表された5月29日にも北朝鮮の公式メディアである「労働新聞」のウェブサイト上では「世界の良心の前で顔を赤らめよ」と題して次のような論評を行っているのである。


日本人なら誰もが、過去の日帝の時期の犯罪の歴史に向き合うときに顔を赤らめるべきである。日本の政事を意のままにするという政治家らの場合はなおさらそうである。当然、正しい歴史巻を持って過去の犯罪の歴史を深く反省し、それに伴う謝罪と賠償をすべきである。
出典:「労働新聞」ウェブサイト(仮訳は北朝鮮FAXニュース(一般財団法人ラヂオプレス)による)
現在の日朝交渉のベースとなっているのは「金丸訪朝団」であるが、これが実施されたのは1990年であり、「平成バブル」の直後であった。また日本人拉致問題をヒートアップさせることになった「小泉訪朝」が実施されたのは2002年。すなわち「ITバブル」の後であった。このように北朝鮮が動くのは決まって、我が国がグローバル・マクロ(国際的な資金循環)という観点で見た場合、マネーが集積した直後なのである。なぜならばそのタイミングでしか我が国政府にカネがないからである。そのことを、自ら国際金融の中心地である「スイス」に留学を長きにわたってしていた金正恩第一書記も熟知していることは間違いないのだ。

したがって焦点は実のところ「アベノミクスはここまでかどうか」にかかってくる。2012年12月から突如として始まったアベノミクスが「もはやここまで」というのであれば北朝鮮としても日本側から早めにマネーを刈り取っておかないといけないということになってくる。だが逆に言うと「アベノミクス」を通じた我が国へのグローバル・マクロという観点での資金流入が今後より激しくなるということであれば、北朝鮮としては拉致再調査の最終結果を示すには未だ早いということになってくるのである。いずれにせよ、5月21日頃から我が国のマーケットを中心に、世界全体の金融マーケットでは決定的に潮目が変わってきている。それを踏まえ、北朝鮮側はいよいよ次なるステップに踏み込んだものと考えることが出来るのだ。

「生存者がまだいる」ことを示唆し始めた北朝鮮

次に北朝鮮側が発表した「合意文」について上記同様の仮訳をベースに気になる点をピックアップしてみる。なぜならば我が国政府が発表した文書には、最後の最後になって「日本語としての粉飾」が行われている可能性が否定できないからである。


日本側は、1945年を前後して共和国領内で死亡した日本人の遺骨の問題と残留日本人、日本人配偶者、拉致被害者および行方不明者を含む全ての日本人に対する調査をわが方に要請した。 わが方は、日本側がこれまで拉致問題に関連して傾けてきた共和国の努力を認めたことについて評価し、従来の立場はあるが、包括的かつ全面的な調査を行い、最終的に日本人に関する全ての問題を解決する意思を表明した。 日本側は現在、独自に講じている対北朝鮮制裁措置を最終的に解除する意思を表明した。
出典:朝鮮中央放送/平壌放送(仮訳は北朝鮮FAXニュース(一般財団法人ラヂオプレス)による)
対北朝鮮外交を巡ってはこれまで「言葉対言葉」「行動対行動」という相互主義の原則が関係諸国によって繰り返し表明されてきた経緯がある。そうした観点から見ると、上記の引用部分を見る限り、我が国は相当譲歩したことがうかがわれる。なぜならば北朝鮮側は「拉致再調査を行う」と約束しただけであり、その成果は何ら確約していないにもかかわらず、我が国は経済・金融制裁の部分解除に応じてしまっているからである。これだけを見ると我が国の外交当局、ひいては安倍晋三総理大臣はなぜそこまで弱腰なのかということになってしまう。だが問題は次の一文にある。


わが方は・・・(中略)・・・特別な権限を付与された「特別調査委員会」を設け、調査および確認状況を随時日本側に追放し、日本人遺骨処理と共に、生存者が発見された場合、帰国させる方向で去就問題を協議し、必要な措置を講じることとした。
出典:朝鮮中央放送/平壌報道(仮訳は北朝鮮FAXニュース(一般財団法人ラヂオプレス)による)
ここで注目しておきたいのが「生存者が発見された場合」と明言している点である。北朝鮮側は基本的にこれまで一貫して「日本人拉致問題に関する調査は完全に終わっている。生存している拉致被害者は全て日本側に送還し、それ以外の者たちは死亡したか、あるいはそもそも入国したことを示す記録は無い」と断言してきた。そして「拉致に関与した北朝鮮当局側の関係者は全て処罰した」とも述べてきたのである。したがって金正日・前政権下で確立されたこの「論理」を踏襲する限り、拉致問題が実質的に進展する可能性は皆無なのだ。ところが今回、北朝鮮側は拉致被害者の中でも「生存者が発見」される場合のあることを明示的に認めたのである。このことの意味は極めて大きい。

なぜならば仮に金正恩第一書記がこうした「生存者発見」を打ち出した場合、それは要するに父・金正日との訣別を意味しているからである。いやもっといえば、父・金正日を中心に画策され、実行されたと考えられている「日本人拉致」を容認した祖父・金日成との訣別をもそれは含んでいる。要するに過去2代にわたって続けられてきた北朝鮮というものの「国の在り方」そのものを変えようという、金正恩体制の強い意思をそれは示すことになるというわけなのである。

「説明責任(アカウンタビリティ)」を打ち出し始めた金正恩第一書記

実のところ、金正恩第一書記はそうした方向へ、この「日本人拉致問題」以外でもここに来て大きく踏み出し始めている。私の英語公式ブログでも詳しく分析したのであるが、先般、平壌にて発生した建築中の高層マンションの倒壊事故について、当局の責任者がメディアと遺族・周辺住民らの前で事実関係の説明と謝罪を行うという異例の措置がとられたことが北朝鮮ウォッチャーたちの間で強い衝撃を呼んでいるのだ。「政府当局は無謬であり、誤りを犯すはずもなく、したがって謝罪することもあり得ない」というのが北朝鮮だけではなく、共産主義・社会主義国家における建前である。だが、金正恩体制は明らかに「説明責任(アカウンタビリティ)」という新概念を政権運営の中に盛り込み始めた可能性があるのだ。

このことは当然のことながら国内に対してだけではなく、国外との関係についてもあてはまる。日本人拉致問題については未だに我が国から疑惑をかけられているわけであり、他方において北朝鮮側としても対日要求事項は山ほどあるのだ。そこで「外交」を通常の形で行いたいというのであれば、一方的に主張するだけではなく、少なくとも事実として北朝鮮側が行った「日本人拉致」については説明責任を果たすべきという判断は当然あり得るのである。

祖父・父との訣別、そして「残留日本人=残地諜報者」という密やかな構図

だがその結果、どうなるのかといえば子・金正恩はその祖父及び父の所業を糾弾することになりかねないのだ。儒教的な伝統を意図的に盛り込み、金ファミリーによる独裁体制を支えるイデオロギーとなっている「主体思想」からすればそれは原理的にあり得ない。しかし父・金正恩が調査し、「もうこれ以上、生存者はいない」としたはずの拉致問題について蒸し返し、しかも「まだ生存者がいた。日本側に引き渡す」と金正恩第一書記が判断するならばそれはイコール、父そして祖父の「体制」そのものとの訣別をもたらすことは必至なのである。いや、それ以上に金ファミリーによる独裁というこれまでの「国是」すら崩壊に導きかねないのだ。

そのことがどれくらいのマグニチュードを持っているのか、またそれが与える我が国への影響はどれほどのものになるのかを考えるに際、あらためてハイライトしておきたいのが先ほど紹介した「合意文」にあった「1945年を前後して共和国領内で死亡した日本人の遺骨の問題と残留日本人」という下りである。ここで特に「残留日本人」という部分が大きな意味を持っている。

なぜならば北朝鮮という「国家」が成立するにあたっては、人的に見て密かに関与していることは明らかだからだ。その筆頭が「建国の父」である金日成の周辺人脈である。そのカギを握るのが金日成の実弟である「金英柱」である。未だに「死亡」が公的に確認されていないこの人物は、戦前の我が国の「関東軍」において通訳として従軍していた人物であり、日本語を含む各国語の達人であったことが関係者の証言によって知られている。本来ならば「対日協力者」として戦後真っ先に処分されてもよさそうなものの、金英柱は朝鮮労働党に入党し、その後も要職を歴任した。

こうした状況をインテリジェンス機関の文脈で素直に考えるならば、この金英柱は「関東軍」が北朝鮮に残した残地諜報者であり、かつその後も「旧関東軍人脈」とのリエゾン(連絡要員)として機能していた可能性がある。事実、金英柱について語ると我が国の旧軍インテリジェンス機関関係者たちは動揺を隠せないのだ。

いわゆる「陸軍中野学校」を筆頭に、我が国のインテリジェンス部隊の主たる活動の現場となっていのが朝鮮半島であった。そのことを考えるならばより広範囲にわが国は実のところ朝鮮半島に「残地諜報者」を置いてきていることは容易に想像がつくのである。不思議と終戦間際に従来の守備範囲を超えて「北緯38度線」まで南下してきた関東軍の領域がそのまま「北朝鮮」となったという事実をも踏まえ、さらには米国の「傀儡国家」として建国された韓国の李承晩政権が軍事的な脅威を我が国に与え始めた矢先に「朝鮮戦争」を始め、これによってそうした脅威を我が国から取り除くのみならず、これに参戦した米軍の補給基地として機能した我が国が朝鮮特需を享受したという事実も勘案すると、「北朝鮮」という国家がプロジェクトとして持っていた本当の意味が浮かびあがって来るのだ。そしてそのプロジェクトに我が国が深く関与していたとするならば、今回の「合意文」は(拉致被害者ではなく)戦後まもなくからの「残留日本人」が「生存」していた場合にはこれを我が国に送還するとも読むことが出来る以上、実のところ北朝鮮側が画策しているのは、そうした意味での「建国以来の秘密」からの訣別でもあるというわけなのである。


「日本との訣別」こそ北朝鮮の本当の戦略だ

「拉致再調査が決定」ということで沸き立つ我が国世論であるが、北朝鮮側の真意がここにある場合、楽観は一切許されない。なぜならばこうした意味での「日本との訣別」こそが本当のテーマであるとするならば、北朝鮮側は日本人拉致問題について明らかに日本側を落胆させる結果を、しかも安倍晋三政権にとって最も困るタイミングで出してくる可能性は十分あるからだ。グローバル・マクロ(国際的な資金循環)のタイミングから言うと、それは世界中で様々なリスクが同時多発的に炸裂する危険性がますます高まってきている今年秋過ぎに行われる可能性がある。なぜならばそうしたリスク炸裂によってそれまでの間は高騰していた我が国の株価も暴落し、「アベノミクスはやはり失敗であった」と安倍降ろしが始まる可能性が出て来るからだ。

しかもその時、北朝鮮は併せて「核弾頭搭載可能なミサイルの発射」を行うことも考えられる。事実、北朝鮮当局の関係者らはここに来て我が国メディアに対して「数か月以内に弾道ミサイル発射を行う」と公言してはばからないのだ。こうした発射が行われれば安倍晋三政権は今回の日朝合意にそうしたミサイル問題について北朝鮮側に釘を刺していなかったことの責任を問われることにもなる。他方でミサイル・マーケットを押さえる米国、そして欧州との対話開始が北朝鮮の真意であることが明らかになることで、今回の合意によって「蜜月」になったはずの日朝関係は一転して「訣別」となり、北朝鮮は米欧との「大団円」の下、「普通の国」へと旅立つことになりかねないのである。

いずれにせよそうなった場合、苦境に陥るのはグローバル・マクロの真実を知らず、複眼思考を失ってしまった我が国の政官リーダーたち、そして外交当局である。「このこと」に果たして彼らが早々に気づくか否かに、今後の我が国の命運がかかっている。



 
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