ギリシャの偶発的デフォルトを懸念する市場

 
そろそろギリシャもデフォルトしそうですね。
万策尽きた感がします。

ギリシャの偶発的デフォルトを懸念する市場
2015/5/26 9:25 日本経済新聞


 ギリシャのデフォルトを回避するために、欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)のトロイカ体制による救済団とギリシャ政府で、瀬戸際の交渉が続いている。6月5日、12日、16日、19日とIMFへの返済が続くため、切迫感が強まってきた。さらに、スペインの選挙で反緊縮を掲げる党が躍進したことで、南欧諸国への「政治的」伝染が危惧される(経済的伝染は、安全網構築、欧州銀行健全性テストなどを経て、危機感は薄らいでいる)。

 そもそも、第2次救済期限延長の締切が6月末に迫るのだが、基本的合意に向けた具体的事例が出てこない。当初は5月末までにはギリシャ側から、検討に足る内容の改革案の大筋が提示されるはずであった。

 いっぽう、ギリシャ側は「トロイカは我々を脅迫している」との態度を崩さない。とはいえ、現連立政権内部の一部閣僚・エコノミストからは、緊縮固辞の姿勢を少し緩めるべし、との意見も出始めた。政権内部の不協和音が目立ち、チプラス首相は、直接国民に判断を委ねる「国民投票」実施を示唆している。そうなると、偶発的なデフォルトやユーロ離脱の可能性も高まり、市場には波乱が予想される

 さらに、トロイカの間にも隙間風が目立ち始めた。

 ギリシャ離脱により欧州の団結が揺らぐことを懸念するEU。ギリシャの基礎的財政収支(プライマリーバランス)は依然黒字見通しを堅持。いざとなれば、ギリシャ向け債権の削減もやむなしとする。

 対して、IMFは強硬だ。チプラス政権誕生以来、年金支払い額が増えていることなどを指摘。プライマリーバランスは再度赤字転落と論じている。ギリシャ側の改革案も、最も重要な「年金改革」と「雇用制度改革」には手を付けず、脱税監視機能強化などの折衷案しか出てこないことに、いらだちを隠さない。ラガルド専務理事も、「総合的アプローチが必要。手っ取り早く、きたないやり方であってはならない」と厳しい表現で現状認識を語っている。IMFから融資を受けている新興国は数多く、例外は認められないとの姿勢である。

 そのIMFへの融資返済期限が6月前半に集中しているわけだ。

 それでも、仮にIMFへの返済が滞っても、それが、ユーロ離脱に直結するまでの事態に急進展することは考えにくい。過去、重債務国の返済遅延の事例は少なくないのだ。

 そこでギリシャ生殺与奪の権を握っているのがECBだ。

 いまやギリシャ民間銀行は、ECBからのライフラインを絶たれると、即、経営不安、取り付け、預金封鎖などのリスクにさらされる。その生命線とは、ELAと呼ばれる緊急流動性供与だ。ギリシャ国債が担保になるが、ECBは、もはやギリシャ国債を適格担保から外しているので、ギリシャ中銀経由での資金供給である。破綻の場合の貸し倒れリスクは、ギリシャ中銀にあり、ECBにはない、との明確な姿勢だ。しかも、ECBは、ギリシャ民間銀行が同中銀から融資を受ける際の担保である短期国債の発行残高に150億ユーロの上限を課している。財政ファイナンス禁止に抵触するような事例は断固認めずとのドイツ連銀の強い反対論を無視できないからだ。ECBの中央銀行としての独立性堅持のためにも、EUからの政治的圧力に屈するかのような行動は容認できない。

 しかも、ECBは巨額のギリシャ国債を過去に買い取り保有しているので、ギリシャ国債価格下落にともない、評価損が膨らみ、銀行の財務健全性が問われかねない。

 ギリシャへの対応を厳格にすればするほど、自らのバランスシートも毀損するというジレンマをかかえる。

 このように見てくると、ギリシャの今はまさに内憂外患。

 チプラス首相は、トロイカへは笑顔で妥協の姿勢を示唆しつつ、自国民には、融資返済より年金・公務員給与の支払いが優先すると語る。「二枚舌」と揶揄(やゆ)されるゆえんだ。

 もはや、5月末の国内支払いで、国庫はほぼ底を尽き、政権側からは、このままでは、6月のIMF返済は不可能との認識が発信されつつある。5月12日のIMF返済時より、状況は明らかに悪化している。口先の時間稼ぎは、もはや通用しない。

 デフォルト回避は共通した願いだが、紛糾する過程で、偶発的債務不履行が生じるシナリオは無視できない。

 マーケットでは、5月の売りは回避したものの、6月の波乱に身構えている。

 25日の欧州市場では、ギリシャ株が3%強下落。ギリシャ10年債利回りも0.7%ほど上昇して11%半ばとなった。スペイン10年債利回りも3月には一時1.1%台まで下落していたが、25日には1.8%台まで反騰している。

 バルカン半島の小国だが、デフォルトすれば、ユーロ参加国に債務不履行国の悪しき前例を作ってしまう。

 世界的経済危機に発展するような事例ではないが、ユーロ不安というイベントリスクによる一時的有事の円高(これを筆者は円高の落とし穴と呼んでいる)、そして、短期的高値警戒感も強まる株価にとって調整売りの口実を提供する可能性がある。

 さらには、先週の米連邦準備理事会(FRB)イエレン議長講演でも、米国経済の3つの逆風の一つとして、欧州経済が挙げられている。米連邦公開市場委員会(FOMC)も、金融政策決定はマクロ経済次第とのスタンスゆえ、利上げ開始時期への影響も視野に入る。

 アルゴリズム取引全盛の市場は、同方向に振れやすく、その巻き戻しもきつい。利上げ時期に一定の予見を持ち、市場の見方が偏ったとき、エーゲ海発の要因が、潮目を変えるリスクも念頭に置くべきだろう。その予告編として、4~5月の世界的金利波乱はまだ記憶に新しい(なお、イエレン年内利上げ発言には、ヘッジがかけられていることについては、25日本欄「イエレン年内利上げ発言の真意」を参照されたい。米国3連休明けの反応が注目される。



 
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